もうアメリカはEU諸国と決裂し、ウクライナに大幅な譲歩を要求している。おそらく、トランプ大統領の友人であるスティーヴ・ウットコフ(Steve C. Witkoff)特使とプーチン大統領の特使であるキリル・ドミトリエフ(Kirill A. Dmitriev)は、水面下で交渉を進めているはずだ。ウットコフとドミトリエフは両方ともイデオロギーには囚われないビジネスマン。資金の無駄遣いでしかない戦闘を続けるより、戦後復興や貿易関係の修復に力を入れるタイプだ。それに、冷静なアメリカ人なら、トランプとプーチンが裏で何らかの取引を結んでいると推測するはず。貧乏籤を引くのはウクライナ人の方である。
米国のスコット・ベッセント財務長官とキエフ政府のユリヤ・スヴィリデンコ(Yulia Svyrydenko)経済相が、相当な議論を尽くして富の分配を決めたんだろうが、ウクライナは鉱物や炭化水素、石油、天然ガス、その他に掘削可能な物質から得た利益の半分を「再建投資ファンド」に渡すことになった。報道によれば、スヴィリデンコがワシントンに赴いて合意文書に署名したそうだ。(Victoria Butenko, Kit Maher, Ivana Kottasová, Daria Tarasova-Markina and Lauren Kent, 'US and Ukraine sign critical minerals deal after months of tense negotiations', CNN, May 1, 2025.)
では、獲物となったウクライナでは、如何なる鉱物が採掘できるのか? 具体例を挙げると、先ずチタニウムだ。よく知られているように、これは超音速で飛行するF-35戦闘機の隔壁やエンジンの部品に使われる物質である。次に、リチウムと言えば、誰でも携帯電話やパソコンのバッテリーを頭に思い浮かべるだろう。これ以外だと、セラミックスやガラスの製造にも使われるし、合金の成分としても重宝されている。ウクライナには50万トンも埋まっているそうだ。グラファイトも広汎な素材として知られており、燃料電池や乾電池、粉末冶金、ブレーキ・パッド、カーボン・ブラシ、塗料、樹脂、鉛筆などに使われている。ニッケルも人気素材で、反応容器や配管、バルブ、携帯電話の端子、メッキの材料、金属加工の難削材などに用いらる。(Scott Neuman, '5 minerals in Ukraine that may be part of a deal with the U.S.', National Public Radio, February 26, 2025.)
内モンゴル自治区のゴビ砂漠には「包頭(パオトゥ)市」があるけど、ここには白雲鄂博(バヤンオボー)という大規模な希土類元素鉱床がある。近年では、風力発電や太陽光発電を実施しているというから、工場稼働のエネルギーに不足は無いと思うが、杜撰な管理状態が問題となっている。(Keith Bradsher, China Has Paid a High Price for Its Dominance in Rare Earth ,The New York Times, July 5, 2025.)こうした公害問題はモンゴル地区だけじゃなく、他の地域でも起きている。例えば、2010年から2011年にかけて、支那の中部や南部でも環境破壊があったようで、稲作地帯に酸性物質やアンモニアが流出したそうだ。
公害問題は支那大陸にととまらず、アフリカ大陸にも及んでいた。支那企業はアフリカ諸国にも進出しているので、現地で様々なトラブルを引き起こしている。例えば、支那はザンビアに「シノ・メタルズ・リーチ・ザンビア」という銅鉱企業を所有しているが、2月18日、現地で深刻な被害が出てしまった。ここにある鉱滓ダムが決壊したことにより、推定で5,000万リットルの廃棄物がカフエ川に流出したというのだ。(Micah McCartney, Map Shows China-Owned Mine Where Acid Spill Caused "Catastrophic" Pollution, Newsweek, March 19, 2025.)ザンビアの人口は約2,000万人で、その約60%が全長1,600kmのカフエ川流域に暮らしている。ザンビアのハカインデ・ヒチレマ大統領は、この流出事故を「クライシス(危機)」と呼び、野生生物と国民生活が危機に瀕していると警告した。
支那企業が引き起こした災害により、人口約70万人を有するキトウェでは、水の供給が完全に停止した。ザンビア当局は流出した酸を中和するため、カフエ川に数百トンの石灰を空中投下した。事故直後に撮影された映像には、鉱山の約100km下流で、川岸に打ち上げられた魚が大量に写っている。杜撰な管理をしていたシノ・メタルズ・リーチ・ザンビアは、支那有色(非鉄金属)鉱業集団公司(China Nonferrous Metals Industry Group)が所有している子会社だ。
もう、紛争が勃発して3年以上の月日が経っているけど、1929に起きた「暗黒の木曜日」みたいな「世界恐慌」は起こらなかったし、2007-2008年の「世界金融危機(Global Financial Crisis)」、所謂「リーマン・ショック」並の大恐慌も起きなかった。もちろん、金融制裁でロシア経済は打撃を受けたし、EUにあるロシアの金融資産が凍結されたから、ロシア経済が無傷ということはない。歐洲委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン(Ursula Gertrude von der Leyen)委員長や英仏独の首脳は、「ユーロクリアー銀行(Euroclear Bank)」といったCSD(證券集中保管機構)に保管されている1,800億ユーロに目を附け、ここから900億ユーロを抜き取り、ウクライナ支援に廻そうと言い出した。もちろん、こんな流用を許したら、後でロシアからの損害賠償を求められるだろう。それゆえ、ベルギーのバルト・デ・ウェーフェル(Bart A.L. De Wever)首相は、強硬派のフォン・デア・ライエンに同意せず、違法な流用に反対したそうだ。
渡邉氏はロシアの凋落を予想したが、意外な事にロシアは歐米諸国からの激しい制裁を喰らっても崩壊せず、逆に国内の需要が伸びてしまった。この驚くべき経済成長で制裁を相殺するほどの好景気になっていたのだ。兵器製造を担う国営巨大企業の「ロステック(Rostec)」や「統一造船会社」も収入が23%も増加し、312億ドルにまで達するようになった。戦時経済となったロシアでは、軍需産業が活気づいている。ウクライナ紛争を継続するため、ロシアは152mm榴弾砲を130万個も製造し、420%の増産になったそうだ。短距離ミサイルの「イスカンデル(Iskander)」も700発ほど造っている。この戦争特需は6,790億ドルもの収入をもたらしたそうだ。(Laura Kayali, 'Russia’s arms-makers thrive despite sanctions, new report says', POLITICO, December 1, 2025.)